ご挨拶

 

 PI-RADS あるいは multi-parametric MRI という言葉を、前立腺癌診療においてよく耳にするようなりました。いずれも画像診断に関わる用語ですが、泌尿器科医や放射線治療医など、前立腺癌の診療に直接あたっておられる先生からむしろよく聞かれます。これは前立腺癌における画像診断、特に MRI の目的が、癌と診断された後の局所進達度診断から、診断の前、すなわち前立腺生検の適応や標的を判断するための臨床的有意癌の検出へと広がり、ますます重要性が高まっています。
 2022年に前立腺癌に対する MRI/US fusion-guided biopsy が保険収載され、不必要な生検を減らし、治療介入の必要がある病変をより効率良く検出することが保険診療でできるようになりました。多くの患者さんの利益となることが期待され、MRI/US fusion-guided biopsy 機器の導入も一気に広がりつつあります。このfusion生検では、前立腺 MRIで対象となる臨床上有意癌を正しく診断することは1丁目1番地であり、その標準化が PI-RADS (Prostate Imaging Reporting and Data System) です。PI-RADSは2012年にv1が発表された後、様々な改定が加わり現在は v 2.1が最新版として利用され、これに準拠したMRI撮像と読影はMRI/US fusion-guided biopsy に必須と言えます。
 しかしながら放射線診断専門医そのものが不足している本邦では、前立腺癌の画像診断に精通する放射線科診断専門医はさらに少なく、全てのMRI/US fusion-guided biopsy 実施施設に応えるマンパワーがないのが実情です。このような背景の中で、前立腺診療にかかわる社会福祉の向上に寄与することを目的として、前立腺癌に関し専門的な診断技術・知識を有する放射線診断専門医が連携し、画像診断技術の普及と向上、標準化、臨床応用の啓発推進、診療における支援や人材育成を行う組織として、当法人を設立いたしました。
 特に PI-RADS v2.1 に準拠した撮像技術支援と、遠隔画像診断支援の技術を利用したMRI画像解析(PI-RADS読影支援)を当法人の支援事業の中核として実施いたします。この支援事業を利用していただくことで、MRI/US fusion-guided biopsy 実施施設で、より質の高い検査と生検が実施され、多くの患者さんの利益に向上につながることを期待しております。

令和5年7月3日
一般社団法人 前立腺画像支援機構
理事長 髙橋 哲