PI-RADS(Prostate Imaging Reporting and Data System)とは

PI-RADS(Prostate Imaging Reporting and Data System)とは
前立腺癌診断におけるMRIの画像評価および報告書作成ための標準化されたシステムで、検査自体の標準化、撮影された画像の読影の標準化をおこなうものです。

PI-RADSは、前立腺のマルチパラメトリックMRI(mp-MRI)を用いて前立腺癌の存在、位置、広がり、リスクを評価するための標準化された方法を提供します。このシステムは、前立腺癌の診断と治療計画における信頼性と精度を向上させることを目的としています。

背景と歴史

前立腺MRIは1980年代から前立腺とその周辺構造の非侵襲的な評価に使用され、当初はT1WIとT2WIを用いた形態評価に基づいており、主に生検で確認された患者の局所進展度診断に使用されていました。しかし、良性の病変と臨床的に重要でない前立腺癌を重要な癌から区別する能力は限定的でした。

2000年代以降の急速なMRI撮像技術の進歩はmp-MRIを撮像可能とし、解剖学的評価に加え機能的・生理学的評価を組み合わせるようになりました。これには、拡散強調画像(DWI)、造影ダイナミックMRI(DCE)などが含まれます。これらの技術進歩とmp-MRIの読影経験の増加により、前立腺癌診断能力が大幅に向上しました。

前立腺MRIの目標

  • 臨床的有意癌の検出: 臨床的に有意な癌の検出能を向上させ、死亡率の低減に寄与すること
  • 良性疾患と臨床的に有意でない癌の確実な診断: 不必要な生検や治療を減らし、患者の負担を軽減すること
  • 臨床応用の拡大:前立腺MRIの臨床応用は局所進展度診断にとどまらず、腫瘍の検出、局在化、性状評価、リスク分類、監視療法、再発疑いの評価、画像誘導生検、手術、局所療法、放射線療法に拡大すること

前立腺MRIの標準化の過程

PI-RADS v1:2007年にAdMeTech Foundationが国際前立腺MRI作業部会を組織し、MRIのパフォーマンス、解釈、および報告のばらつきを減らすための標準化が推奨されました。これを受けて、欧州泌尿器放射線学会(ESUR)がガイドラインを作成し、2012年にPI-RADS v1が発表されました。

PI-RADS v2:PI-RADS v1の限界を認識し、米国放射線学会(ACR)、ESUR、AdMeTech Foundationが共同で2015年にPI-RADS v2を発表しました。PI-RADS v2は、グローバルな標準化を促進し、前立腺mpMRIの検査方法、読影方法、報告書記載法のばらつきを減らすことを目的としています。v1から評価方法や技術仕様が改訂されました。

PI-RADS v2の目的と目標

  • 前立腺mpMRIの最小限の技術パラメータを確立する
  • 放射線レポートの用語と内容を簡素化および標準化する
  • 生検のためのMRIデータの利用を促進する
  • 疑わしい病変の評価カテゴリを開発し、生検や治療の選択に役立てる
  • データ収集と結果の追跡を可能にする
  • 放射線科医に前立腺MRIの読影方法や報告書の記載方法を教育し、読影医間の不一致を減らす

PI-RADS v2.1:2019年にさらに改訂され、解釈と報告書作成の精度がさらに向上しました。詳細については別途記載します。

PI-RADSカテゴリーの意味
各病変が臨床的有意癌である可能性を 1から5 の 5 段階で評価します。

  • PI-RADS 1: 臨床的有意癌が存在する可能性は非常に低い
  • PI-RADS 2: 臨床的有意癌が存在する可能性は低い
  • PI-RADS 3: 臨床的有意癌存在するかどうかは不明確(どちらとも言えない)
  • PI-RADS 4: 臨床的有意癌が存在する可能性が高い
  • PI-RADS 5: 臨床的有意癌存在する可能性が非常に高い