PI-QUAL version 2について

はじめに
 「前立腺MRIは難しい」といわれていますが、評価を難しくさせる大きな原因の一つは、良好な画質を安定して得ることが難しいことかもしれません。
 MRI超音波フュージョンによる標的生検が保険収載され、ますます前立腺MRIへの関心・要望が高まり、依頼も増えていますが、依頼する泌尿器科医も含め、画質の重要性の認識が十分とは言えません。画質をスコア化するPI-QUALは、元々多施設共同研究に際して画質を管理するために提唱されましたが、読影に値する検査か、再撮像が必要かなどの目安として海外では認識されています。(PI-QUALが提唱された背景についてはこちらを参照)
 わが国では普及しているとは言いがたいスコアリングですが、蓄積されたエビデンスに基づき、2024年5月にはversion 2が発表されました。ここではPI-QUAL version 2の実際を解説したいと思います。

どのような検査が評価対象か?
(1)T2強調、拡散強調/ADC、造影ダイナミックを含むmp-MRI
(2)T2強調、拡散強調/ADCのみのbp-MRI

満たすべき必須撮像条件
(1) T2強調画像
・3mmスライス厚
(2) 拡散強調画像
・≦4mmスライス厚
・高b値≧1,400s/mm2(計算画像でも可)
・b=1,000s/mm2までの少なくとも2つのb値によるADCマップ
(3) 造影ダイナミック
・3mmスライス厚
・時間分解能≦15s
・脂肪抑制、サブトラクションやヒートマップも可

※以上の必須条件を満たさない場合は、以下のそれぞれのシークエンススコアが0点あるいは(−)となる。

シークエンス別スコア表
(1) T2強調画像
 1. 横断像:全ての部分で適切なSNR
 2. 横断像:被膜、精嚢、射精管、神経血管束、外尿道括約筋などの重要構造の輪郭を明瞭に追える
 3. 横断像:前立腺領域に有意のアーティファクトがない
 4. 冠状断または矢状断:適切なSNRと空間分解能で、かつ前立腺領域に有意のアーティファクトがない
 ※T2強調画像スコア(  /4)点。ただし必須撮像条件を満たさない場合は0/4点

(2) 拡散強調画像
 1. 高b値拡散強調像:適切なコントラストとSNR
 2. ADCマップ:移行域/BPHと辺縁域の適切なコントラスト
 3. 前立腺領域に歪み(T2強調と比べて>5mm)などの有意なアーティファクトを認めない。
 4. ADCマップ/高b値拡散強調像とT2強調横断像とが解剖学的に一致
 ※拡散強調画像スコア(  /4)点。ただし必須撮像条件を満たさない場合は0/4点

(3) 造影ダイナミック
・前立腺領域に有意のアーティファクトがなく適切な造影効果
・被膜血管や外陰部動脈など解剖学的構造が認識できる

 ※造影ダイナミックスコア両者を満たしたときのみ(+)。
  ただし必須撮像条件を満たさない場合は(-)